【人手不足解消】老人ホームのHACCP管理を調理済み食材で簡素化!安全と効率を両立する秘訣
2025.06.20
2021年6月から食品衛生法改正により、完全義務化されたHACCP(ハサップ)の導入・運用に、大きな負担を感じてはいませんか?
「HACCPの考え方は重要だと理解しているが、日々の記録業務が大変…」
「慢性的な人手不足の中、これ以上スタッフに負担をかけられない」
「複雑な衛生管理に追われ、本来の調理業務や献立作成に集中できない」
このようなお悩みは、多くの老人ホームに共通する喫緊の課題です。
入居者様の安全を守るために不可欠なHACCPですが、その管理の複雑さが現場を疲弊させている状況があります。
このHACCP管理を劇的に簡素化し、同時に厨房業務の効率化や人手不足の解消にも繋がる方法が今回ご紹介する「調理済み食材」の活用です。
本記事では、調理済み食材がなぜ老人ホームのHACCP管理の救世主となり得るのか。
そのメカニズムから具体的なメリット・デメリット、そして失敗しない導入のポイントまで、詳しくに解説していきます。
そもそもHACCP(ハサップ)とは?なぜ老人ホームで重要なのか
まずはHACCPの基本と、老人ホームにおけるその重要性について改めて確認します。
HACCPの基本
HACCPとは、「Hazard Analysis and Critical Control Point」の頭文字を取ったもので、日本語では「危害要因分析重要管理点」と訳されます。
簡単に言うと、「食中毒菌や異物混入などの危害(Hazard)をあらかじめ予測(Analysis)し、その危害を防止するための特に重要な工程(Critical Control Point)を継続的に監視・記録することで、製品の安全性を確保する衛生管理の手法」です。
従来の抜き打ち検査とは異なり、製造工程の各段階で対策を講じる「予防的」なアプローチであることが最大の特徴です。
老人ホームでHACCPが重要視される切実な理由
では、なぜ一般の飲食店以上に、老人ホームでHACCPが厳しく求められるのでしょうか。理由は大きく2つあります。
入居者様は食中毒のリスクが非常に高い
高齢になると、加齢に伴い免疫機能が低下します。
若い人なら軽い症状で済むような食中毒菌でも、高齢者の場合は重症化しやすく、時には命に関わる事態に発展する危険性があります。
抵抗力の弱い入居者様の健康と安全を守ることは、施設の最も重要な責務です。
施設の信頼性に直結する
万がいち、食中毒事故が発生した場合、入居者様とそのご家族に多大な苦痛と不安を与えるだけでなく、施設の社会的信用は大きく失墜します。
安全な食事を提供することは、施設の信頼の根幹をなすものです。
このような背景から、2021年6月、すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が完全義務化されました。
しかし、その導入と運用には、以下のような課題が伴います。
- 管理計画(HACCPプラン)の作成が複雑で難しい
- 温度管理や衛生チェックなど、日々の継続的な記録と保管に手間がかかる
- HACCP(ハサップ)に関する専門知識を持った人材が不足している
特に、食材の受け入れから、下処理、調理、盛り付け、提供まで、多くの工程を自施設で行う従来型の厨房では、管理すべきポイントが多岐にわたり、現場の負担は増大する一方です。
おすすめ記事:老人ホームで発生しやすい食中毒と調理済み食材を用いた予防方法
救世主!「調理済み食材」がHACCP管理を簡素化するメカニズム
こうしたHACCP運用における課題を解決する強力な一手として有効な方法が「調理済み食材」の活用です。
調理済み食材とは、セントラルキッチンなどで専門的に製造され、衛生管理の行き届いた状態で施設に届けられる食材のことです。
クックチルやクックフリーズ、真空調理品といった種類があり、施設側では湯煎での再加熱や簡単な盛り付けだけで提供できるのが特徴です。
では、なぜ調理済み食材を使うとHACCP管理が楽になるのでしょうか。
その秘密は、HACCPの要である「重要管理点(CCP)」そのものを削減できる点にあります。
おすすめ記事:深刻な人手不足を乗り越える!老人ホーム厨房の救世主「調理済み食材」活用術
HACCP(ハサップ)の重要工程が省略できる!
従来の調理法と、調理済み食材を活用した場合の工程を比較してみましょう。
【従来の一から手作り調理の場合】
原材料の受け入れ → 【CCP】下処理(洗浄・カット・殺菌) → 【CCP】加熱調理(中心温度の測定・記録) → 【CCP】急速冷却・保存 → 再加熱 → 盛り付け → 提供
【調理済み食材を活用した場合】
調理済み食材の受け入れ → 再加熱(湯煎など)→ 盛り付け → 提供
このように、食中毒菌が付着・増殖するリスクが特に高いとされる下処理、加熱調理、冷却・保存といったHACCPの重要管理点(CCP)を、ごっそりと省略できるのです。
具体的に見ていきましょう。
下処理工程の省略
野菜の泥を洗い流し、殺菌・カットする。肉や魚のドリップを処理し、下味をつける。こうした下処理は、食中毒菌が最も付着しやすい工程であり、厳密な管理が求められます。
調理済み食材は、この工程が製造工場で完了しているため、施設でのリスクと管理の手間がゼロになります。
加熱工程の簡略化
HACCP(ハサップ)では、病原菌を死滅させるために「中心温度75℃で1分間以上(ノロウイルスの場合は85~90℃で90秒間以上)」といった厳密な加熱管理と、その都度の温度測定・記録が必要です。
調理済み食材は、製造元がHACCPに則って完璧な加熱管理を行っています。
施設側で行うのは安全な温度帯での「再加熱」のみとなり、CCPとしての厳格な管理・記録業務から解放されます。
冷却・保存工程の簡略化
加熱調理後、食中毒菌が増殖しやすい危険温度帯(約10℃~60℃)をいかに素早く通過させるかという「冷却」も重要な管理点です。
ブラストチラーなどの専門的な急速冷却設備が必要になる場合もあります。
調理済み食材(特にチルドやフローズン)は、この冷却工程も製造元で完了しているため、施設での管理は不要です。
このように、HACCPで最も神経を使い、記録業務が集中する部分をアウトソーシングできる。
これが、調理済み食材がHACCP管理を簡素化する最大のメカニズムです。
結果として、日々の記録簿への記入項目は激減し、HACCPプラン自体も非常にシンプルなものになります。
メリットはHACCP簡素化だけじゃない!調理済み食材導入の多角的な利点
調理済み食材の導入は、HACCP(ハサップ)管理の負担軽減以外にも、老人ホームの厨房運営に多くのメリットをもたらします。
人手不足の解消と劇的な業務効率化
下処理や加熱調理にかかっていた膨大な時間を削減できるため、少人数での厨房運営が可能になります。
調理経験の浅いパート・アルバイトスタッフでも対応しやすくなり、慢性的な人手不足の解消に直結します。
空いた時間を、盛り付けの工夫や、入居者様とのコミュニケーションに充てることもできます。
トータルコストの削減
「調理済み食材は単価が高いのでは?」と感じるかもしれません。
しかし、以下の点を考慮すると、トータルコストではむしろ削減に繋がるケースが多くあります。
- 人件費の削減:調理時間の短縮により、残業代や人件費を抑制できます。
- 水道光熱費の削減:長時間の煮込み調理や、下処理での大量の水の使用がなくなります。
- 食材ロスの削減:必要な分だけを発注するため、野菜の使い残しや見込み違いによる廃棄ロスが大幅に減ります。
誰が作っても美味しい「品質の安定」
従来の調理では、調理担当者のスキルや経験によって味にばらつきが出ることがありました。
調理済み食材は、プロの調理人が開発・製造しているため、常に安定した美味しい食事を提供できます。
「今日の煮物は味が濃い」「昨日と味が違う」といったことがなくなり、入居者様の満足度向上に繋がります。
メニューの多様化で食事の楽しみを向上
「施設では手間がかかって作れない」と諦めていたような、手の込んだメニューも手軽に提供できます。
和・洋・中、様々なジャンルのメニューを献立に組み込むことで、食事のマンネリ化を防ぎ、入居者様の「食べる楽しみ」を喚起します。
災害時の備え(BCP対策)として
冷凍・冷蔵で長期保存が可能な調理済み食材は、災害時の備蓄、いわゆるBCP(事業継続計画)対策としても非常に有効です。
ライフラインが寸断された状況でも、カセットコンロと水さえあれば、温かく栄養のある食事を提供でき、入居者様の安心に繋がります。
調理済み食材のデメリットと、その賢い乗り越え方
もちろん、調理済み食材にもデメリットや導入への懸念は存在します。
しかし、それらは事前の対策によって十分に乗り越えることが可能です。
導入コスト・単価の高さ
前述の通り、食材の単価だけでなく、人件費、水道光熱費、廃棄ロス削減分まで含めた「トータルコスト」で比較検討することが重要です。
総合的にはコスト削減に繋がることを、具体的なシミュレーションで確認しましょう。
味が画一的で「手作り感」がなくなるのでは?
調理済み食材は専門のセントラルキッチンなどで製造された食材が納品されます。
従来、自前調理(現場調理)で提供していた老人ホームでは一番の懸念点となります。
しかし、以下の対策を施すことで不安が解消されます。
部分的な導入から始める
すべての食事を最初から置き換える必要はありません。
例えば、調理に手間のかかる主菜や副菜の1品だけを調理済み食材にしたり、週に数日から試したりと、スモールスタートを切るのも、おすすめです。
「ひと手間」でオリジナル感を出す
盛り付けに季節のあしらいを添えたり、上からあんをかけたり、刻みネギを散らしたりと、簡単な「ひと手間」を加えるだけで、手作り感は格段にアップします。
複数メーカーの比較と試食
メーカーによって味付けの傾向は様々です。必ず複数社の試食を行い、施設の入居者様の好みに合う味を見つけることが成功の鍵です。
アレルギーや食形態への個別対応
この点は、高齢者施設向けの調理済み食材メーカーを選ぶ上で重要なポイントです。
近年、メーカー側の技術も飛躍的に向上しており、以下の対応が可能な調理食材が増えています。
- アレルギー対応食
- 刻み食、極刻み食
- ミキサー食、ペースト食
- ソフト食(ムース食)
- 治療食(減塩食、エネルギーコントロール食など)
自施設で必要とされる個別対応が可能かどうか、事前にしっかりと確認しましょう。
失敗しない!調理済み食材メーカーの選び方と導入のポイント
調理済み食材の導入を成功させるための、具体的なメーカー選びと導入の進め方について解説します。
徹底した衛生管理体制
メーカー自身のHACCPやISO22000などの認証取得状況は必ず確認しましょう。
衛生管理への意識の高さを示す指標となります。
高齢者施設向けの実績
高齢者の嗜好(味付け)、必要な栄養素、嚥下機能に配慮した物性(柔らかさ、まとまりやすさ)を深く理解している、実績豊富なメーカーを選びましょう。
多様な食形態への対応力
前述の通り、自施設で必要とされる食形態や治療食に、どこまで対応できるかを確認します。
手厚いサポート体制
管理栄養士による献立作成の相談や、導入後のフォローアップなど、厨房運営をサポートしてくれる体制が整っているかも重要なポイントです。
必ず「試食」を行う
カタログだけでは味や食感、使い勝手は分かりません。
厨房スタッフや、管理者も含め、複数社の試食を必ず実施してください。
スムーズな導入のために心がけたいこと
調理済み食材への切替は老人ホームにとって重要なポイントになります。
以下の対策をすることでスムーズな導入ができます。
スモールスタートで始める
いきなり全面切り替えを目指すのではなく、まずは特定の曜日やメニューから試験的に導入するのも、ひとつの方法です。
現場のオペレーションを確認しながら徐々に拡大していくのが成功への近道です。
厨房スタッフへの丁寧な説明
導入の目的が「手抜き」ではなく、「HACCPを遵守し安全性を高めること」と「業務負担を軽減すること」にあると丁寧に説明し、理解と協力を得ることが不可欠です。
「新しい調理法を導入する」という前向きな意識を共有しましょう。
入居者様への説明とフィードバック
食事内容の変更について事前にアナウンスし、提供後には感想を聞く機会を設けることで、不安を和らげ、より良い食事提供に繋げることができます。
まとめ:HACCP簡素化の先にある、より質の高いケアの実現へ
本記事では、老人ホームにおけるHACCP管理の簡素化、そして厨房業務全体の効率化を実現する切り札として、「調理済み食材」の活用を解説しました。
HACCPの遵守は、入居者様の安全を守る上で絶対条件ですが、そのために管理業務が現場を圧迫し、疲弊させているという現実は見過ごせません。
調理済み食材を賢く活用することで
- HACCPの重要管理点を削減し、記録業務を大幅に簡素化できる
- 人手不足を補い、厨房業務を効率化できる
- トータルコストを削減し、安定した品質の食事を提供できる
といった、多くのメリットが生まれます。
そして最も重要なのは、これらによって創出された時間と心のゆとりを、入居者様一人ひとりに寄り添ったケアや、食事をより楽しんでいただくための工夫に振り向けられることです。
調理済み食材の活用は、単なる業務効率化ツールではありません。
それは、施設の安全性を確固たるものにし、スタッフの負担を軽減し、ひいては入居者様の満足度を向上させるための、未来に向けた戦略的な投資です。
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